貴方ってつまり、僕のあたらしい喪失ってだけ
ぬるい水が伝う肌膚
裏切りを憶えた花のいろ
あおい眼は水玉模様に汚れてく
千年も昔の雨に錆び付いたままの僕にも、
ばら色に咲いてたころのあじさい
台本なんざ気休めにもなりやしない
雨音ばかり饒舌な夜が更けていく
(いいえ、あれは銃声ですよ)
六月の星座はいつも雨に塗り潰される
〈劇薬〉のラベルを貼った砂糖水
抽斗のなかに雨が降るとき
いつか毒になっても
おまえの人生にひつようなかなしみのすべてをおれが与えたい
あなたの舌が何枚あるか国じゅうみんな知ってます
世界とかいう吹きっさらしに引きずり出されて
酔えない夜と引き換えに青い月のまぼろしを見る
うつくしいと云わないくせにうつくしいものを寄越すんですね
どうしても薔薇はばら色に咲いてしまうので
ワールド・ウェザー・ニュース、あるいは終末予言
その滴が海洋となって私たちを隔てるときに
あとはもう弾が尽きるまで降りしきるだけ
新時代、あいとにくしみは分断される
もうあなたのせいではぐちゃぐちゃになれない
できるだけ心臓にちかいところに傷を遺したかったんです
私の理性はどんな色もすきですよ
欺くのではありません心を修正するんです
正義が雲の上を過ぎてゆく時間
これが私の国の雨です
百年後も六月があなたの膚を呪いますように
ふたりの月は色違い
一番暗いところが出口
いってらっしゃいを云う係
大人の時間には鎖がついている
あの子はまだ子供だったことがないから
あまいくちびるは嘘つきのしるし
涙の似合わない子どもはいない
たいせつじゃないひとと愛し合う方法
残りかすみたいな心臓しか持ってない
祈り方を思い出せたらもっとまともな恋ができる
何かろくでもないもので満たされたいような夜
いつまでたっても大人にしかなれない
あたらしい雨があたらしい涙を隠しますように
目が覚めたらいなかった(という嘘)
朝というのは子どものために来るものだから
ガラスの靴さえのこらない夜明け
立派な大人になって私を初恋と呼んでくれ
ありもしない情熱で僕の膚を騙してくれよ
泣き方も知らない子を大人とは言わない
正しいじぶんのほかに縋る相手がいないから
残りふたつの心臓で生きていく
いつか信念さえ覆してくれるんでしょう?
名前だけはたくさんあるこの関係
いないひとのためのとくべつな場所
あなたへと向かう感傷を傷のままにしておくために
めでたしめでたしのところでどうして僕は
あとひとつ捨てればまっさらになれた
がんばってがんばって僕は僕を騙してきたのに
両方って言えたら大人になったと言ってあげるよ
雨はいつしかあの日の雪にすりかわる
何故あなたがあなたを奪っていってしまうの
ただひとつの火がどの星かもうわからない
残りぜんぶの七月に誰がいて誰がいないか
「いつか王子様が呪いを解いてくれますよ」
名前ならたくさんあるのに呼んでくれるひとがたりない
いちばん特別な席だけが空いたまま
余った椅子に座ってみるのを止めないくせに、
目覚めるまでは悪夢じゃなかった
あなただけいないハッピー・エンディング
硝子越しに降る雨が誰の頬を濡らしたの
「両手でしか抱けないものもあるんです」
なんにもうまくいかなくても、あなたにそばにいてほしい