錆び付いた太陽をどかせない
いちどは初恋とよんだえいえん
ごめんなさい八月はあのひとのものだから
伸びすぎた影が爛れてく
ひりひりする空洞にひびく
似たような空があるかぎり
肩越しに死んでゆく夕
分けあった夜を信仰にする
一生になるまであと何時間?
その声、その手、その眸にしか傷つかない
うすらいでゆく宵の形見に
次の夏に呪われるまえに
天からもらった暴虐のしるし
いつか別の永遠を生きるお前が
俯いた睫のさきに星の火を視た
残りぜんぶの青を今夜に
腫れたまなざしが嘘をゆるさない
焼き切れた赤縄の痕
めくってもめくってもおなじ八月
てのひらひとつで星も消える