動 物 た ち の 架 空

小さな雛は待っていた。
そうしてどこかへ飛んでった。
(テニスン「小さな雛はなんという?」より)

( 件とミノタウロス )
始まるのは終焉ばかり
人面と獣身
怖ろしいのはどちらだろうか
揺落前夜
一昨日生まれの神さま
WHEEL of FORTUNE
軋みながら加速してゆく
ラビュリントスに出口は無い
( 兎の王国 )
青い眼をした贋兎
from A to Z
三月庭園を旅する
懐中時計の古傷
鏡像は猫のように嗤う
アルビノでいっぱいの口腔
王国を滅する者
角砂糖を幾ら研いでも
( 鸚鵡の飼い方 )
リフレインは命じ続ける
知らぬ名を呼ぶ獣
耳障りな吉報
Repeat after me.
憐憫に飼われる鳥
お前は極彩色の虚無をくれた
空想上の鳥籠に
饒舌過ぎたから直ぐに夢だと解った
( ある幼蝶の翅 )
片翅の濡れ羽いろ
花の名を呼ぶ声
かわるがわる愛した花蜜
羽化したが最後
ある蒐集家の後悔
お前に留める勇気が有るか?
あの子は飛び去って戻らない
carpe diem
( 仔猫愛好家に捧ぐ )
雨降路地街
彗星ゆずりの尻尾
邪気ない舌鋒
飼い殺し企画
貴殿は救われねばならぬ
余所で餌を貰ったろう
どうか彼奴に護られてやってくれ
チョコレットになるのがゆめ
( 雲雀と小夜啼鳥 )
寝台と月明かり
不足器官
嘘の貸し借り
白昼夢の啼き声
偶には優しい結び目を
朝陽の昇らぬ檻で
眼窩に満ちる毒
ティル・ナ・ノーグの三つの針