伸ばしたこの手を、
 お前は魔手と呼ぶのだろう。

残るのはどうせ美しさだけ
莫迦な魔法使いが見るような夢
死人のような優しさを期待しないでくれないか
ただ喪失によってしか君は私を愛さない
幸福を毒薬のように言うのはやめなさい
呪いにしかなれない恋に何の意味があるの
天は貴方からの逃亡をゆるさない
悍ましくも美しくそして淋しい

お前は一流の悪夢になれる
魔は無かろうと天使だって居はしない
永遠さえ持っていれば私などに愛されないのに
はばまれた幻惑のさきには
まるで愛など知らぬげに
真実は未遂のまま腐ってゆく
歪んだ鏡にはなんの魔法もない
遠ざかる色が青ならば

夜でさえなければ抱いてやれたのに
物騒なその手がいちばんやさしい
飲み干せば泣いてしまうような毒
誰かこの子の魔法を解いてやってくれないか
牢獄には君の名前が付いている
美しさを貴方は愛と呼んでいたけれど