劇場の扉を開けると、サーカスはもう始まっていた。
顏の片側に仮面をつけた男が一礼。月と星座たちは開いた幕の中を行き来する。その星星の環を、鎖に繋がれたレグルスが翔る。鎖は今にも千切れそうだが仮面の男も観客も気づいたようすはない。いかにも窮屈そうで、主人公は切れろ切れろと願っている。すると急に、天井から吊り下げられた太陽が墜ちてきて、レグルスは月蝕の環をくぐり抜け、鎖をついに引き千切る。客席のほうへ翔けてくるので観客は一目散に逃げていく。主人公も人波に押されながら非常口から押し出されてゆき、ちらと振り返った時には、レグルスはもう夜の空の天辺まで上っていて、サーカスは跡形もなくなっていた。
(2014.03.02)