夏の名残の薔薇
The Last Rose of Summer
黄色は嫌いなんです。いくら薔薇だって、黄色じゃ夢も見られない。
だけども、黄色い薔薇だって、匂はたしかに薔薇なのですね。
それがなにより酷い話です。
名残は薔薇の匂で
星空の下でならあなたの隣はそんなに苦しくありませんでした。天の川との対比ではあなたもわたしと同じにちっぽけでしたから。もしも、あなたとわたしがただ銀河の前にだけ立っていられたなら、千年だっていっしょにいられたと思うんです。
次のポラリスをきみと
紅いお茶は、紅いまま呑むのが好きでした。苦みと一緒に紅いのを呑み下せば、わたしの夢がミルクティーみたいに甘ったるくなってゆくのを引き止められるような気がしたからです。実際は、執心が紅く色づいてゆくばかりでありましたけれど。
呑み込んだ恋の真紅
どうしてわたしは自分で植えてしまったんでしょう。
あなたの薔薇だけ、花瓶に咲かせておればよかったものを。
泣いたら摘んでやったのに
お前はそうやって謝るけれど、日を選んで咲けないのは、花ならば当たり前のことだろう。何を謝る事があるんだ。もう咲かないかと諦めかけていたとびきり大切な花が、美しく咲くのを見られて嬉しい。俺は嬉しいのだから、謝るんじゃない、どうか笑ってみせてくれ。
ごめんなさい咲いてしまう
それがどんなにみじめなことか、あなたにわかりますか。
それがどんなに甘美なことか、わたしはいつかわかるでしょうか。
もはや惜しまれないはずの喪失にさえ、手向けずにはいられないのです。
リボンをかけて水底へ
枷ならば外すしかあるまい。
けれど、それがもし、棘だったならば。鋭く尖っていてもいい、それが無数の小さな棘だったなら、血を流したままでいたい。傷が目立たぬよう、全身に返り血を浴びてみせるから、いつまでだってお前のために傷ついている。
野茨の絡むままずっと
お前は時制や修辞ばかり気にしてたけど、俺には声そのものが大事だったよ。
緊張で、動揺で、お前の声が震える。そのひとつだって零すもんかと思ってた。
我々がほんとうにことばにするべきだったのは、きっとそちらのほうだったんだ。
By any other name
あなたのお庭は、あのころのまま美しいですか。
わたしのお庭は、みんなすっかり燃えてしまいました。
薔薇が焼けてしまっても、次の盛りは来るでしょうか。
来年でなくても、何十年あとだっていいです。また咲くのをゆるしてください。
来夏では遠すぎる