#5 いかにしてページをめくるか

キティがキッチンのほうへ去っていったので、ドロシーはちょっとコースターのお庭へ入ってみることにしました。やりかたを知っていたわけではありませんが、なんだかできそうなきがしたのです。

すてきな赤い鳥が羽ばたきのはずみで落とした真っ赤な羽根を拾って言いました。
「お庭に入るのは、アゾートを作るのと似ているわね。だとすれば、アゾートを使うことにも似ているのではないかしら。」
自分が言っていることがほんとうはどういう意味なのか、ドロシーはわからないまま言っていましたが、声にだすともっともらしくて、まるで哲学者になったようなきもちです。もちろん彼女は、哲学者というのがほんとはどんな気持ちでいるいきもののことなのかちっとも知りませんでしたけど。

「うさぎさん、使い方は教えてくれなかったけど、きっとだいじなことはおんなじよ。」

特に、いまは、まだ牛乳が配達されていませんから、アゾートに似たところにドロシーを進めるにはちょうどいいはずです。

「要は、つまり、ページをめくればいいんだわ。めくるためのページはわたしには見えないけど、でも、わたしがいるのがページだとすれば、どこをつまんだってそれはページだということね。どこでもいいからつまんで、めくればいい。それならわたし、きっとできるわ。」

ドロシーは、自分ひとりでページをめくるのははじめてなので、たくさんめくり方をためしてみることにしました。








これは、魔術師になったきもちのめくりかたです。
次は詩人になったようなきもちになることにしました。






ドロシーは、ほかにも、旅人になったきもちや、騎士になったきもちなど、いろいろためしてみましたが、うまくいきません。

めくれそうなかんじはするのですが、どうもめくりきれず、中途半端でおわってしまいます。《黒猫屋》のページから、《コースターのお庭》のページへ、めくる分量はどのくらいかを考えないといけないのかもしれません。

「わたし、たくさんのページをめくろうとしすぎているのかも。コースターはここにあるのだし、キティだってすぐに戻ってくるんだから、きっと、ほんの次のページへ行くとか、そのくらいでいいのよね。」

そう結論付けたドロシーは、最後に、ひとつのめくり方をためしました。






「ああ、困ったわ。」



円テーブルにひじをつき、大きくためいきをつくと、三つのお花を順番に見つめました。
すると……三つのお花はたがいに目くばせをして、頷きあっているではありませんか!
花たちはドロシーにも合図して、コースターの左下の角を示しましたので、ドロシーはコースターの左下の角をつまんで、めくりました。
まるで、ページをめくるように、です。