或いは、カンバスにおける虹彩の色
青色アゾートとして孵化した薄紅小鳥の七章


#1 月明博士の実験は佳境を迎える   ぺーじをめくる
そしてきょう、美術室に 降矢 を残したまま、ぼくがめずらしく一人きりで学校から帰ってくると、 月明博士 はきのうのつづきをやっていた。

#2 美術教室から天窓までのいきさつ   ぺーじをめくる
「青い薔薇が《青という色》を暗喩するなどということはありえないということじゃ。」
それっきり、博士はもう何も説明する気はないと言いたげにそっぽを向いた。

#3 小鳥は青灰色のキャビネットに降り立つ   ぺーじをめくる
着地するのにふさわしい場所をさがして、ぼくは白い壁にぽっかりあいた窓辺にとまることにした。ちょうどその窓だけ開いていたし、ぼくは薄紅色になるまえから窓辺が好きだった。

#4 絵葉書の駱駝がしゃがれ声で話したこと   ぺーじをめくる
「おぼえておくといい、小鳥くん。絵描きとは、人の中に鳥を、鳥の中に人を見出す生き物だよ。そして、ほんものの絵描きとは、だれよりも真実に近いところにいるものだ。」

#5 青眼の兎は蝋燭に火を燈させる   ぺーじをめくる
「青色アゾートの卵が、誰にでも割れるわけがない。君は、卵を割るというきっかけで孵化したけれど、卵なんか無くたってじきに孵化していたに違いないんだよ。」

#6 芸術家は薄紅色の羽根を拾う   ぺーじをめくる
降矢は、淡々と言いながら床にかがみこんだ。なにか拾い上げて体を起こし、左のてのひらにのせたものをぼくにも見せてくれる。それは、羽根だった。薄紅色の、ぼくが落とした羽根だ。

#7 パイプは煙を吐いて琥珀色になる   ぺーじをめくる
お月様はというと、すっかりいじけて、しきりにパイプをふかしている。あたりには蒼白い煙がたちこめ、白いパイプの顔色はだんだん黄色くなってきていた。

おまけ ものがたりの構成物質たち   ぺーじをめくる
全七章にあらわれる、へんてこな設定や奇妙な実験の元になった、たくさんのおはなしや雑貨たちをご紹介。併せて作者のいいわけとひとりごとを長々と記した、いわゆるあとがき。


おはなしの棲むところ

書いたひとは 悧子 といいます。ここは Norz さんのための Allusion 出張所です。
Quartz さま の画像をお借りしました。ありがとうございます。
UPDATE : 2010/7/12